里の便りvol.9 実りの喜び



 10月はじめ、秋分末侯「水始めて涸る」。田んぼの水を抜いて、稲刈りが始まります。カミツレの里でも今年の稲を無事収穫することができました。山鳥の声だけが響く静かな棚田で、冷たい山の水と、高原の日差しでのびのびと育ったお米です。しばらくの間、刈り取った稲穂を八寿恵荘の玄関先でも天日にあてて干してあります。ぜひ、じかに触れて、ほのかに残る山の田んぼの香りを感じてみてください。







 里の「おやさい畑」からのおすすめは、柔らかい光を受けて芽吹いたシュンギクの若葉たち。おろ抜き大根(おろ抜き=間引き、だそうです)は酢漬けやお味噌汁に。力強い葉っぱのカタマリは、夏のパワーを蓄えたトレビスです。朝晩はすっかり冷えるようになってきました。この寒暖差が、お野菜たちをもっと美味しくしてくれます。



 カミツレの里から散策路を約20分、歩いた先に佇むのはこの大峰高原、ひいてはこの池田町のシンボルともなっている巨木「七色大カエデ」。既にご存知の方も多いかもしれませんね。高原ならではの早めの紅葉で、一足先に、秋の深まりのなかへ人々を誘います。10月半ばごろから本格的に紅葉が始まり、一本の木の中で緑、黄色、橙色、朱色といった暖かいグラデーションを見せてくれます。



 山の木々もつぎつぎに実をつけています。尖ったのや丸いの、形を比べながら拾うだけでも楽しいどんぐりは、縄文時代には渋抜きをして食べていたそうです。クルミの実も今が最盛期。早朝には、クルミの実を集めて枝から枝へ飛び移るリスの姿が見られるかも。そして風の吹いた翌日には、栗拾いがおすすめ。両足の靴の先を使って「イガ」を剥いていきます。日本古来から人々に身近な食料である栗に含まれるビタミンCは、豊富なデンプン質に守られ加熱してもこわれにくいのだそうです。自然が与えてくれるものを、そのときにいただくだけで、心から充たされます。



 ますます日が短くなり、お風呂も恋しくなる頃。カミツレエキスをたっぷりと入れた「華密恋の湯」にはいつもよりも長めにゆっくりとお浸かりください。暖かい館内で、皆さまをお迎えしております。